「白鳥の湖」香港バレエ団(2004.10.16)

 今まで外観しか知らなかった香港文化中心の中に潜入を
 兼ねて地元バレエ団の「白鳥の湖」を見てきました。
 左 ← はプログラム(無料)表紙。なぜ黒鳥?

 系統でいえば英国系になるのかな。ちょっと前まで英国
 だったし。芸術監督はStephen Jefferies氏。経歴はプログラ
 ムによるとロイヤルバレエスクール→カナダナショナルバレエ
 →ロイヤル。美術はピーター・ファーマー。他、照明等、舞台
 スタッフは英国人多し。ダンサーの階級はプリンシパル、シニ
 アソリスト、ジュニアソリスト、コリフェ、コールド、の5つ。

 ダンサーのレベルは思っていたより高かったです。私が見た
 のは土曜日のマチネだったので、主役はシニア・ソリスト、
 ロットバルトはコリフェでしたが、話を引っ張っていく存在感は
 十分にありました。マチネでコレなら、プリンシパル勢揃いだ
 と東バぐらいのレベルになるのでは??群舞も揃っていたと
 思います。全体的にダンサーのスタイルが良く(アジア人とし
 ては。韓国国立バレエ団ほど西洋的ではないけど、子供体型
 でもポッチャリでもない)、表現力、演技力もありました。
 
 観劇メモによりますと。演出は各種取り混ぜの悲劇版。以下敬称略。

  ●1幕。ワルツと乾杯の踊りは同じグループ。人数が少ないので(8組ぐらい)、舞台を埋める
   ためかリフト多様の振付が多く、ちょっと忙しないかんじがしました。王子の張堯(Zhang Yao)
   は身長はやや高め、というぐらいだけど、全体的なバランスが良い。薄すぎず厚すぎず短すぎ
   ず長すぎず。脚も真っ直ぐ。ちょっと5番が甘いかな。結構脚に隙間があったよん。気合いが
   入っているときはしっかし閉じているけど。ここの演技はもうちょっとメランコリックな方がいい
   んじゃないかなあ。気品はあって王子らしくはある。ベンノの日高賢二はマイムがうまかっ
   た!パ・ド・トロワの男性もベンノ。「王子の友人」という設定だから、ある意味正しいよね。ここ
   もリフトが多かったなあ。女性陣、高秀桃 (Crystal Costa)と富村京子も良かったです。家庭
   教師を振り回すのは女性一人でした。ベンノが王子を誘って1幕は終了。

  ●2幕。ベンノ他数名の友人達と狩りに来た王子。ロットバルトの林立峯(William Lin)はコリフェ
   だけど、踊り慣れているような気がする。禍々しさが良く出ていました。BMBのリカ・ナーガを
   思い出させる動き。羽はブルメイステル版のようなジュディ・オング系。黒ではなく鈍い金色?
   王子とオデットの出会いはロイヤル系のマイム。オデットの金瑤(Jin Yao)は、私の理想ほど
   腕は長くないけど、動きはなめらかなので、その辺はあまり気にならないっす。二人が一度
   引っ込み白鳥の群舞。20羽ぐらい?2重円のフォーメーションで私が好きな方だ!と思って
   いたら何故かその真ん中でビックリしているのはベンノ。なんで???ここからちょっと記憶が
   曖昧。すんません、睡眠時間が短かったので、ちょっとウトウト。う〜ん、でも、なかなか白い
   世界でしたよ。群舞の途中で通常2羽&4羽が真ん中で踊るところは2羽のみ。4羽の白鳥の
   後の大きい白鳥も、この2羽でした。

  ●3幕。王子は黒い衣装。6人の花嫁候補と踊った後にロットバルトとオディール登場。各国の
   踊りはロットバルトの手下。スペインの女性は、黒地にちょっと緑が入った衣装で、その辺の
   お姉ちゃんが結婚式に着ていく衣装ぽくって、好みじゃないわ。踊りはフラメンコっぽい振付で
   メリハリに欠けていたような。反り返りが見たかったんだけどなあ。続いてはチャルダッシュ。
   これは、まあ、普通。次はナポリ。牧歌的で・・・・って悪魔の手下なのに・・・・・・。微笑ましい
   雰囲気になったところでオディール&王子登場。えっっっっ!なんで〜。シメるんならマズルカ
   じゃないの???とまどいの中、踊りは続く。金瑤は黒鳥の方が合っているかな?キレの良い
   踊りでした。32回転はダブル入り。一回すごく危なくなったけど、持ち直して最後まで回りきり
   ました。会場からも大拍手。張堯も、この辺の誑かされつつ、オデットの幻影が・・・の演技は
   なかなかに良いですわ〜。相変わらず脚に隙間はあるけれど。ベンノはいなかった、かな?
   宮廷の人々は、ちょっと衣装負け。あまり着こなせてなかった。

 ●4幕。概ねブルメイステル版。白鳥が2列で上手に消えていくヤツ。なのに、なぜかオチは
   悲劇版。絶望した白鳥が湖に飛び込み、王子が後を追い、弱ったロットバルトに白鳥達が
   攻撃(ってのは嘘)。人間に戻りつつある彼女たちの後ろ(紗幕後ろ)、天国に昇る二人の姿
   で幕。
   途中、王子を攻撃するロットバルトに、オデットが立ち向かう場面(舞台上では、ロットバルトを
   ちょっと押すぐらいなんだけど)がありました。その時、彼女自身、驚いた表情でした。運命に
   従うしかなかった自分が悪魔に反抗するなんて・・・、というのかな、自分の行動にとまどう
   金瑤の表情がとても良かったです。初めて自分の意志で行動できたのは王子を愛したから。
   「愛」が彼女に力を与えたんだな、と。愛する二人の姿にロットバルトの力が奪われるわけ
   ですが、その前段階として、説得力のある演出でした。

 ●オーケストラ。音自体は悪くないけど、「白鳥」にはまだ慣れていないのかなあ?黒鳥の弦が
   コキコキしていて、滑らかじゃなかった。指揮者(Francis Rainey)がバレエ慣れしていないかと
   思ったんだけど、プログラムによると1970年からシュツットガルド・バレエ団で指揮など、バレエ
   作品はたくさん経験しているようなので、オケ側の問題かな?

 ●会場など。入場料はS席で300HKドル。日本円だと4500円ぐらい。別な会場ではもっと
   安いみたい。会場なのかオケの有無なのか。チケットは前日に香港文化中心のチケットボック
   スで買いました。座席表を提示されながら、最初はH列の真ん中と言われたのですが、手振り
   身振りで後方通路側にして貰いました。当日行ったら、オケが入ったのでH列は前から2列め
   ぐらいでした。変更できて良かったわ!会場の雰囲気は、私の知っている中ではさいたま文 
   化センターが一番近いです。椅子はなんとなく1000days劇場を思い出す赤。物販はほとんど
   なく、バレエ団のポストカードとかが売られていていた程度。目に付くところでは飲食物は販売
   されていませんでした。夜になると出るのかなあ?ドレスコードは無いようで、皆さんラフな
   格好でした。海洋公園帰りのGパンの私も全然浮きません。バレエファン、というのではなく
   単純に「バレエ(「白鳥の湖」)を見に来てみました〜」ぐらいの気軽なカンジっぽい。1階席で
   オペラグラスを持っていたのは私だけかも?って状態。白鳥の出とか、黒鳥の出とかで拍手が
   無かったので、みんな楽しんでるの〜?と不安でしたが、カーテンコールでは大いに盛り上が
   っていました。こういう、マニア(笑)じゃない人たちが楽しんでいる姿って新鮮。良いわ〜。
   マチネということもあり、会場にはお子様が多かったのですが、開演中は静かでした。香港の
   喧噪からは、こんなに静かにしてくれるとは想像していなかったので、ちょっと感動。

 ってなワケで、外国でのバレエ鑑賞は初めてでしたが、なかなか楽しゅうございました。また機会が
 あったら見てみたいカンパニーでした。

香港バレエ団公式サイト(英語) → http://www.hkballet.com/eng/index.html